東京・神原元弁護士の意見陳述

東京訴訟第14回口頭弁論(結審) 2018年11月28日

 

 1 結審を迎えるにあたり、特にご指摘しておきたい点を3点に絞って述べさせて頂きます。

2 第1に、本件で「捏造」とは事実の摘示であり、意見なり論評なりということはあり得ないということであります。

本件における「捏造」の意味について、被告西岡は、著作(甲3号証47頁、記載A⑤)で、極めて明快に定義しております。

 

植村記者の捏造は(中略)、義理のお母さんの起こした裁判を有利にするために、紙面を使って意図的なウソを書いたということだ

 

ここまで明確に定義されているのですから、誤解の余地などあるはずがありません。ここで「捏造」とは「意図的なウソを書いた」という意味であり、被告西岡は、一貫して、「原告は義母の裁判を有利にするという悪しき動機をもって金学順の証言を意図的にねじ曲げてこれと異なる記事を書いた」と述べているのです。「意図的なウソをついたかどうか」が証拠等をもって存否を決することができる事項であることも明らかであります。

 

ここでの「捏造」は、「意図的なウソ」ですから、故意によるものであることが必要です。したがって、本件で、被告らは、単に①原告の記事が金学順の証言と異なることを立証したのでは足りず、②原告がそのことを知りつつあえて記事を書いたこと、そして、③原告が義母の裁判を有利にするという悪しき動機に基づいて記事を書いたこと、を立証しなければならないと言うべきであります。

 

3 第2に、「『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され」という記載についてです。

そもそも当該記載には、括弧書きのない、いわゆる「地の文」(会話以外の説明や叙述の部分)であり、金学順の発言をそのまま引用した記述でないことは文面上明らかです。この記載は、金学順の立場なり境遇なりを、原告が、原告なりに要約して表現したものに過ぎないのです。ですから、金学順がテープの中で「挺身隊の名で戦場に連行され」というそのままの文章を話したかどうかを問題とするのは全くナンセンスであります。

そして、金学順が「自分は挺身隊だった」と明確に述べており(甲50、甲21)、自己の体験について「連行された」、「強制連行された」(甲110、23)という趣旨の説明していることも事実であります。そうであれば、金学順の立場なり境遇なりを、原告が、原告なりに要約して「『女子挺(てい)身隊』の名で戦場に連行され」と表現したとしても、それをもって金学順の証言をねじ曲げた等といえるはずがありません。

被告西岡は、この表記は国家総動員法に基づく強制連行のことを指すと主張しています。この点は、本日提出の甲168号証(1943年3月16日当時のニュース映像「第145号」)をご覧下さい。これは、女子挺身勤労令公布以前の映像であるにも拘わらず、「女子挺身隊、前線へ」という記載がはっきり見て取れます。「女子挺身隊」という語は、女子挺身勤労令の公布以前から、自主的に編成される動員形態を示す語として国民に定着していたのであります。被告西岡の主張は前提を欠くものというほかありません。

さらにいえば、「女子挺身隊として戦場に送られた」とか「女性挺身隊として強制連行された」といった表現は91年当時の新聞に数多く見られます。他の記者とほとんど変わらない表現を使っているのに、なにゆえ、原告についてのみ、捏造の故意を認定できるのでしょうか。もはや、邪推、言いがかり以外に何物でもないのではないでしょうか。

 

4 第3に、「キーセン」の問題について述べます。

被告西岡は、原告がキーセン学校について記事に書かなかったことを「捏造」だと言っています。しかし、ウソを書いたというのであれば別論、「書かなかった」ことを「捏造」だというのであれば、それがどうしても書かなければならないほど重要な事項であり、かつ記者もそのように認識していた、ということが前提なのではないでしょうか。

この点、91年当時、原告だけではなく、読売新聞も産経新聞もどの新聞もキーセンについて書いてないのです(甲22乃至24)。被告西岡も認めるとおり(被告西岡本人調書41頁)、それが当時の「一般的な解釈」であり「多数派」だったからです。だから、原告もそれが重要な事項だと考えませんでした。それでなぜ「意図的な捏造」等と言えるのでしょうか。

被告西岡は「キーセンは公娼制度の一環である」と主張しています。これが極めて偏った見方であることは準備書面に詳述しました(最終準備書面56頁以下)。問題はそれだけではありません。これについて被告西岡が出してきた文献(乙12)は1995年のものです。それで、91年当時、原告が西岡と同じ認識に達した等と、なぜ決めつけることができるのでしょうか。

 

5 原告に対するバッシングはあまりにも理不尽であり、あまりにも根拠がないものであります。裁判所の速やかな救済を求めるものであります。

 

以上