PART ◎裁判の経過と判決 

 

植村裁判は東京と札幌で計33回の口頭弁論が開かれた。判決は地裁と高裁で計4回言い渡された。最高裁決定は2回下され、植村氏の敗訴が確定した。「捏造ではない」との事実がどのように明らかにされ、賠償請求はなぜ棄却されたのか。判決確定に至るまでの裁判の経過と判決内容を記録し、判決の分析、批判、検証の材料としたい。

  

PART5の記事

 

裁判概要・東京訴訟 

【原告】植村隆    【被告】西岡力、株式会社文藝春秋

【請求の内容】 謝罪広告の掲載とWeb記事の削除慰謝料の支払い(計2750万円)裁判費用の負担

【裁判経過と判決】

一審東京地裁(原克也裁判長)

提訴2015年1月、口頭弁論開始2016年4月、結審2019年5月、口頭弁論回数16回

判決2019年6月26日、請求を棄却

二審東京高裁(白石史子裁判長)

控訴2019年6月、口頭弁論開始2019年10月、結審2019年12月、口頭弁論回数2回

判決2020年3月3日、控訴を棄却

上告審最高裁(第一小法廷、小林裕裁判長)

上告2020年3月、決定2021年3月11日、上告を棄却

【概要】

裁判は2015年4月、東京地裁で始まった。口頭弁論は16回開かれた。口頭弁論は第14回の2018年11月に終結し、判決日は2019年3月に指定された。ところが、判決の1カ月半前、原克也裁判長が西岡氏側に証拠を追加提出するように求め、弁論を再開しようとしたため、植村弁護団は裁判長らの忌避を申し立てた。判決直前に裁判官忌避が申し立てられ弁論が中断するのは異例のことである。

忌避申し立ては東京地裁、東京高裁(抗告)、最高裁(特別抗告)でいずれも却下された。

判決は2019年6月に出された。原裁判長は、西岡氏側が植村氏の社会的評価を低下させたことを認めた上で、表現内容について、「そう信じたことには相当の理由がある(真実相当性)、また一部は真実である(真実性)」ことを理由にして、西岡氏側の不法行為責任を免じた。植村氏の請求はすべて退けられた。植村氏はすぐに東京高裁に控訴し、判決の取り消しを求めた。同高裁での口頭弁論は2019年10月から2回開かれ、判決は2020年3月に出された。白石史子裁判長は一審判決を支持し、控訴を棄却した。植村氏は3月、最高裁に上告した。2021年3月、上告棄却の決定が出され、植村氏の敗訴が確定した。

 

裁判概要・札幌訴訟 

【原告】植村隆 【被告】櫻井よしこ、ワック、新潮社、ダイヤモンド社

【請求の内容】①謝罪広告の掲載とWeb記事の削除②慰謝料の支払い(計1650万円)③裁判費用の負担

【裁判経過と判決】

▽一審札幌地裁(岡山忠広裁判長)

提訴2015年2月、口頭弁論開始2016年4月、結審2018年7月、口頭弁論回数12回

判決2018年11月9日、請求を棄却

▽二審札幌高裁(冨田一彦裁判長)

控訴2018年11月、口頭弁論開始2019年4月、結審2019年10月、口頭弁論回数3回

判決2020年2月6日、控訴を棄却

▽上告審最高裁(第二小法廷、菅野博之裁判長)

上告2020年2月、決定2020年11月18日、上告を棄却

【概要】

札幌での裁判は、櫻井氏側が東京地裁への移送を求めたため開始が遅れ、口頭弁論は2016年4月、札幌地裁で始まった。口頭弁論は12回行われ、2018年7月に結審した。判決は同年11月に出された。
岡山忠広裁判長は、櫻井氏側が植村氏の社会的評価を低下させたことは認めたが、表現内容に真実相当性があることを理由にして、不法行為責任を免じた。植村氏の請求は退けられた。植村氏はすぐに札幌高裁に控訴した。同高裁での口頭弁論は3回開かれ、判決は2020年2月に出された。冨田一彦裁判長は一審判決を支持し、控訴を棄却した。植村氏は2月、最高裁に上告した。11月、上告棄却の決定が出され、植村氏の敗訴が確定した。