櫻井氏の名誉棄損 前歴

BOX1 裁判の経過と各判決の内容、当事者の経歴、弁護団の構成

経過と概要

一審

(東京地裁

原告 安部英

被告 櫻井良子

控訴審

(東京高裁

控訴人 安部英

被控訴人櫻井良子

上告審

(最高裁)

上告人 櫻井良子

被上告人 安部英

提訴日

1996年7月19日

判決日

2002年1月30日

2003年2月26日

2005年6月16日

請求の内容

被告は1000万円を支払え、「判決の結論の広告」を朝日新聞に掲載せよ。

判決主文

原告の請求をいずれも棄却する。訴訟費用は原告の負担とする

原判決を次のとおり変更する。

被控訴人は、控訴人に対し、400万円を支払え(遅延損害金の記載略)。控訴人のその余の請求を棄却する。訴訟費用は一、二審を通じて五分の三を控訴人、その余を被控訴人の負担とする

原判決のうち上告人敗訴部分を破棄する。前項の部分につき、被上告人の控訴を棄却する。訴訟費用及び上告費用は被上告人の負担とする

名誉棄損の認定

問題とされた記載のすべてについて、社会的評価を低下させたことを認める

慰謝料の支払い

請求を棄却

命じる(400万円と利息)

請求を棄却

謝罪広告の掲載

請求を棄却

請求を棄却

請求を棄却

弁護費用の負担

全額を安部負担

3/5を安部、2/5を櫻井

全額を安部負担

公益目的の存否

問題とされた記載のすべてについて、公益目的があることを認める

公共の利害の存否

問題とされた記載のすべてについて、公共の利害に関わりがあることを認める

真実性の判断

全摘示事実に積極認容

すべての摘示事実で否定

積極的に判断せず

真実相当性の判断

意見論評で積極認容

すべての摘示事実で否定

すべての摘示事実に認容

取材の評価

13件の取材を積極評価

13件の取材を否定評価

13件の取材を消極評価

当事者 ※東京地裁判決書の記述による。高裁判決書もほぼ同文

安部英(あべ・たけし)  血液学(特に血液凝固、血友病など)を専門とする医学者でり、また、臨床医として多くの患者の診療に携わってきた。1941年に東京帝国大学医学部を卒業し、42年に海軍軍医科士官として従軍した後、46年に東京帝国大学医学部第一内科学教室に復帰し、53年から57年までの欧米留学を経て、64年に東京大学医学部第一内科講師となった。その後、71年の帝京大学医学部創設に際し、同大学医学部第一内科教授に就任し、80年に同大学医学部長に就任し、87年には、同大学副学長に就任して名誉教授の称号を受けたが、96年2月に辞職した。その間、83年6月から翌年3月まで、厚生省に設置された「後天性免疫不全症候群の実態把握に関する研究班」(いわゆるエイズ研究班)に所属し、主任研究者(班長)を務めていた。

櫻井良子  「櫻井よしこ」の名前で活動しているフリーのジャーナリストであり、1980年7月から96年3月まで、日本テレビのニュース番組「きょうの出来事」のニュースキャスターを務めていた。

弁護団の構成

安部 武藤春光(元名古屋高裁長官)、弘中惇一郎(主任)、喜田村洋一ほか計6人

櫻井 河上和雄(元東京地検特捜部長)、的場徹、鈴木利廣ほか計33人

 

BOX2 事案の概要と問題とされた記載

事案の概要

各審判決書の冒頭記述による。記述中の原告・控訴人・被上告人、被告・被控訴人・上告人は、わかりやすくするために、氏名に書き替えた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

東京地裁 原告=安部英、被告=櫻井良子

櫻井は、非加熱濃縮血液凝固因子製剤(非加熱製剤)の投与により血友病患者に多数のエイズ感染者が出たという、いわゆる「薬害エイズ」を題材として雑誌に記事を連載し、これをもとに単行本を執筆した。雑誌記事と単行本には、安部が加熱濃縮血液凝固因子製剤(加熱製剤)の臨床試験を遅らせたなどの記載があり、安部は、その記載によって名誉を毀損されたと主張して、櫻井に対し、慰謝料1000万円の支払と、名誉回復の処分として新聞紙上への判決結論の広告の掲載を求めた。

東京高裁 控訴人=安部英、被控訴人=櫻井良子

 本件は、櫻井が、非加熱濃縮血液凝固因子製剤(非加熱製剤)の投与によって、血友病患者に多数のエイズ感染者が出た、いわゆる「薬害エイズ」を題材として、雑誌に掲載した記事「私の傍聴した『東京HIV訴訟』裁判(最終回)」(中央公論社発行「中央公論」1994年4月号、1994年3月発売)、及びこれをもとに執筆して出版した単行本「エイズ犯罪 血友病患者の悲劇」(中央公論社発行、初版本1994年8月7日発行)について、安部が、本件記載には、安部が加熱濃縮血液凝固因子製剤の治験を遅らせたなどの記載があり、その記載によって名誉を毀損されたと主張して、櫻井に対し、慰謝料1000万円及びこれに対する不法行為の後である1994年8月8日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求めるとともに、名誉回復の処分として原判決別紙一記載「判決結論の広告」を新聞紙上へ掲載することを求めたところ、櫻井が、本件記載において摘示した事実は真実であり、また、仮にそれが真実ではないとしても、真実であると信ずるについて相当の理由があるなどと主張して争った事案である。原審は、安部の請求を棄却したので、安部が控訴した。

最高裁 上告人=櫻井良子、被上告人=安部英

本件は、安部が、櫻井に対し、櫻井が執筆した雑誌の記事と単行本の記載によって名誉を段損されたとして、不法行為に基づき、損害賠償と謝罪広告の掲載を求める事案である。

問題とされた記載

ア 治験「調整」でミドリ十字に便宜 

イ 治験の時期に寄付を募る

ウ 絶対的地位で寄付を強要 

エ 金に染まって医師の心を売り渡す

各判決書の共通記述による。年号は西暦に書き替えた。/は改行を示す


■記載ア それにしても、なぜ安部氏は治験の開始時期を遅らせたのか。厚生省が治験の説明会を業者向けに行なったのが83年11月である。これでもアメリカが治験を許可した83年3月から8カ月遅い。それを安部氏は開発の遅れていたミドリ十字にあわせて全体の治験開始をさらに遅らせ、84年2月にやっと始めさせた。/ 「ミドリはうんと遅れてたんだ。(一方)トラベノールはもうずうっと前からやっていたんだ。だから差がつくわけだ」/安部氏は1988年2月4日の『毎日新聞』とのインタビューでこのように述べ、さらに、「治験をやるのは僕らだからね。向こうが急いでやってこられたから、僕がちょっと調整する意味もあった」と話している。/日本の血液製剤市場の4割を占める最大手、ミドリ十字にあわせて全体の治験を「調整」した結果、日本での加熱製剤の認可は最終的に85年7月にずれこんだのだ。アメリカより2年4カ月遅い。/こうして本来ならHIVに感染しなくてもすんでいたはずの多くの患者に感染させてしまった理由は、結局安部氏の〝欲″にほかならないのではないか。


■記載イ 治験の時期、安部氏がメーカー各社から寄付を募っていたことはつとに知られている。安部氏が理事長をつとめる財団法人「血友病総合治療普及会」設立の資金としての寄付である。


■記載ウ 安部氏は一体いかほどの資金提供を受けたのか。通帳を確認する姿が幾度となく目撃されたのは、安部氏が継続的に資金を受けとっていたということであろう。/加熱治験の代表責任者としての安部氏は、メーカーに対しては絶対的優位に立っており、その立場で寄付を強要したとなれば大問題だ。/別の人物は、財団設立の資金だけでなく、学会での安部氏の地位と体裁を保つための資金も大きな額になると推測する。


■記載エ 資金提供を受けていたから、どの社もおちこぼれないように治験を遅らせた安部氏は、一体いかほどの金に染まって医師の心を売り渡したのか。 

 

BOX3 櫻井の取材経過とそれに対する控訴審判決の評価

取材の経過

ア 広河隆一の著作を読んだ

イ 東京HIV訴訟の準備書面類を入手した

ウ 東京HIⅤ訴訟弁護団の情報

エ 衆議院予算委の会議録

オ 厚生省課長へのインタビュー

カ 厚生省課長の証人尋問

キ 山田兼雄医師のインタビュー

ク 日本製薬元専務のインタビュー

ケ 帝京大関係者の供述

コ 友の会の会報

サ 東京HIV訴訟原告の話

シ 毎日新聞の記事

ス 製薬会社5社の取材拒否

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

櫻井の取材経過として、東京地裁判決はア~スの13件を列記している。これに対して東京高裁は、それぞれについて「真実性」と「真実相当性」を認めない理由をのように記している


ア 被告は、フリーのジャーナリストである広河隆一から薬害エイズの話を聞いていた が、平成4年3月下旬に広河の著作「エイズからの告発」が出版されたので、早速れを読んだ。

この著作には、安全な加熱製剤が米国では昭和58年の時点で販売されており、他方、日本で最大のシェアを誇っていたミドリ十字は当時、加熱製剤の開発が一番遅れていたこと、ミドリ十字としては加熱製剤の導入が早まればシェアを失う危機にあったこと、日本において加熱製剤の治験の責任者の地位にあり、ミドリ十字と太いパイプを持つ安部医師が治験を意図的に遅らせ、ミドリ十字の加熱製剤の開発が間に合うように「調整」操作をしたこと、安倍医師が昭和59年夏から昭和60年春にかけて帝京大学でのエイズ患者の存在を隠し続けていたこと、その期間は安倍医師が加熱製剤の治験を行い、ミドリ十字のために治験の期間を「調整」していた時期と重なり、さらに財団法人血友病総合治療普及会の設立のための寄付を要求した時期とも重なっていたこと、血友病総合治療普及会は実体のない法人であり、安倍医師がミドリ十字以外にも、トラベノール、カッターから1000万円ずつ、化血研から300万円、財団のための寄付を受けていることなどが記載されていた。

ジャーナリストの著作であるが、同著作に記載された事実が真実であることについて、高い信頼性が確立していたことを認めるに足りる証拠はないから、同著作に前記のような記載があることをもって、その記載された事実を真実と信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


イ 櫻井は、いわゆる東京HIV訴訟を、1982年5月14日の第15回口頭弁論から傍聴するようになり、原告弁護団から訴状、答弁書、準備書面などの主張書面だけでなく、書証や証人尋問調書もほとんど入手して、検討した。

櫻井は、トラベノールの90年10月29日付け準備書面により、トラベノールが83年3月21日に米国でFDAから加熱製剤の承認を受けたこと、日本では同年10月28日に「臨床治験施行のための代表世話人」である血友病専門家から第Ⅰ相試験の治験計画案が示されたことを知った。また、ミドリ十字の90年10月29日付け準備書面により、ミドリ十字はトラベノールが加熱方法として乾燥加熱処理法を採用したことを一種の驚きとして受け止め、それを契機にミドリ十字も乾燥加熱の研究に入ったこと、ミドリ十字は84年1月になって品質試験、一般薬理試験、急性毒性試験などの前臨床試験を終えたことを知った。

➡東京HIV訴訟の原告弁護団から得た準備書面、書証、証人尋問調書であるが、準備書面は、係争中の一方当事者が自己の事実上及び法律上の主張等を記載したものであり、その記載事実が常に真実であることについて客観的な保障ないし高い信頼性があるとはいえず、また、書証や証人尋問調書についても、櫻井が当時入手した書証等が具体的にどの書証であるかは明らかでない上、その内容の信憑性は各証拠毎に審査しない限り判断し得ないものである。そして、本件で提出された丙田五郎、甲川三郎、甲山八郎らの各証人尋問調書によっても、安倍医師がミドリ十字に合わせるため治験の開始を遅らせた事実、及び治験の時期に、安倍医師が製剤メーカー各社から寄付を募っていた事実が真実であると認めることはできない。したがって、前記準備書面及び尋問調書等の記載をもって、それが真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


ウ 櫻井は、東京HIV訴訟の原告弁護団を通じて、安倍医師が83年12月に製剤メーカーを集めて治験説明会を開催したことや、安倍医師が84年1月に突然、 治験統括医を辞任した事実を知った。

➡東京HIV訴訟の原告弁護団から提供された情報であって、その内容が伝聞である以上、それだけでは真実と信ずるについて相当の理由があるということはできない。また、その情報が、治験説明会の開催や安倍医師の辞任にとどまるものであれば、その情報が、ミドリ十字の加熱製剤の開発の遅れ及び安倍医師が治験を遅らせたという事実に直ちに結び付くものではない。


エ 櫻井は、88年2月23日の衆議院予算委員会の会議録を読み、そこでの厚生省薬務局長の答弁により、安倍医師がトラベノール、カッター、ヘキスト、化血研、ミドリ十字の5社の加熱製剤の治験について「代表世話人」となったこと、これら5社の加熱製剤の製造承認がいずれも85年7月1日であったこと、加熱製剤の治験開始時期はトラベノールが84年2月、カッターが同年3月、ヘキストが同年3月、化血研が同年5月であり、ミドリ十字が同年6月で最も遅かったことを知った。

➡その情報は、ミドリ十字の加熱製剤の治験開始時期が他社に比較して最も遅かったというものであり、この記載からは、ミドリ十字の治験開始が遅れていたことを真実と信ずるについて相当の理由があるということができる。しかし、そのことから、ミドリ十字の加熱製剤の開発が遅れていたと信ずるについて相当の理由があるとまではいえない。


オ 櫻井は、92年12月下旬、広河隆一とともに、厚生省薬務局長の郡司篤晃元課長に対てインタビューをした。

郡司元課長からは、トラベノールが加熱製剤の輸入承認を求めて厚生省に説明に来たこと、エイズ研究班を発足させた当時から厚生省が加熱製剤の導入に重大な関心を寄せていたこと、当時、郡司課長としても加熱製剤の治験の開始が遅れたことに関心を持っていたこと、安倍医師に関して治験に絡めて金銭を集めているとのうわさが聞こえてきたこと、このことを人を通じて安倍医師に伝えたことを聴取した。

➡郡司課長に対するインタビューであるが、その内容は、同人が加熱製剤の治験の開始が遅れたと認識していたこと、安倍医師が治験に絡めて金銭を集めているとの噂を聞き、安倍医師にこれを伝えたことであり、このことから、安倍医師が治験を遅らせたこと、治験に絡めて金銭を集めていたことを真実と信ずるについて相当の理由があるということはできない。 


カ 櫻井は、93年3月15日、東京HIV訴訟の第22回口頭弁論を傍聴し、郡司元課長の証人尋問を聴いた。

郡司元課長の証言により、83年11月に開催された厚生省説明会では、第Ⅰ相試験の省略と治験例数が重要な内容であり、厚生省側は、第Ⅰ相試験については、必要ないものは必要ないと明確に答えを出せば、加熱製剤の治験がしやすくなると考えていたこと、また、加熱製剤はまったくの新薬ではなく生物製剤基準の一部の変更になるので、剤型追加の基準を準用して治験例数を明確にしたことを、櫻井は知った。

➡郡司課長の証言であり、この証言により、同課長は、第Ⅰ相試験は必要ないと述べることによって治験がしやすくなると認識していたこと、加熱製剤については生物製剤基準の一部の変更になるので、剤型追加基準を準用して治験例数を明確にしたことを認識することができる。そして、安倍医師が第Ⅰ相試験の実施が必要であると考え、治験例数を多くする計画案を提示していたことから、安部医師が厚生省とは異なる考え方を有していたことは認識することができるとしても、このことから、安倍医師が治験の開始を遅らせたと評価することはできないから、前記証言をもって安倍医師が治験を遅らせたと信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


キ 櫻井は、93年7月22日、血液製剤小委員会の委員であった山田兼雄医師に対してインタビューをした。山田医師は、血液製剤小委員会の報告書は非加熱製剤を高く評価する原告の意向を反映させたものと推測していること、安倍医師は目的のためには他のものが見えなくなり、しゃにむになりがちな性格であることなどを語った。

 山田医師に対しては、94年1月27日と2月4日にもインタビューをして、83年暮れに郡司課長から、加熱製剤の治験と金銭の関係を原告に進言するように依頼された経緯について取材した。

この取材により、郡司課長が加熱製剤について「剤型変更」という方法により治験を行わないで承認することを検討していたこと、そのことを安倍医師に訴えるよう郡司課長が依頼したので、これを受けた山田医師らが安倍医師を訪ねて「剤型変更」を承諾するよう頼んだこと、その際、治験を依頼している製剤メーカーに安倍医師が財団への寄付を要求しているとのうわさについても、郡司課長から頼まれていたので、山田医師が「うわさが真実だとすれば自重したほうがよい」と安倍医師に伝えたこと、これに対し安倍医師は「もう終わった」と答え、寄付の要求はしていないとは述べなかったこと を、櫻井は把握した。

➡櫻井は、山田医師から、同人が安倍医師に対し、安倍医師が治験を依頼している製剤メーカーに寄付を要求しているとの噂があるので「自重したほうがよい。」と伝えたところ、安倍医師が「もう終わった。」と答えたが、安倍医師は寄付の要求をしていないとは述べなかったとの情報を得たものであるが、同情報によっても、安倍医師が治験に際し寄付を要求していることが真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


ク 櫻井は、93年8月、日本製薬の元専務である国行昌頼に対してインタビューをた。

国行元専務は、安倍医師はミドリ十字と仲がよかったこと、加熱製剤の治験に絡んで安倍医師がミドリ十字の立場に配慮していたこと、治験では第Ⅰ相試験を行うことに安倍医師が固執していたこと、安倍医師が長い期間の治験に固執したのはミドリ十字が他社に比べて加熱製剤の開発が遅れていたためだと考えられること、安倍医師が自己の主宰する財団設立のために寄付金を集めたり、クリオ製剤の適用拡大に反対したことに関して、郡司課長も安倍医師に対し批判的であったことなどを語った。

➡櫻井が日本製薬の国行元専務とのインタビューによって得た情報は、加熱製剤の治験に絡んで安倍医師がミドリ十字の立場に配慮していたこと、安倍医師が長い期間の治験に固執したのは、ミドリ十字が他社に比べて加熱製剤の開発が遅れていたためであると受け止められるものであるが、同社はミドリ十字と競業関係にある製剤メーカーであり、このインタビューのみから、その情報が真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。また、化血研の担当者からの情報についても、当該担当者が誰でどのような立場にあるものかも不明である上、同社は、ミドリ十字と競業関係にあるメーカーであることからすると、このような取材から、その情報が真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


ケ 櫻井は、93年9月4日以降、数回にわたって、帝京大学の内部事情に詳い関係者から取材をした。

この人物は、安倍医師が自室の机の前の棚に10センチほどの預金通帳の束を無造作に置いているのを見たこと、三菱銀行板橋支店に安倍医師の口座があること、製剤メーカーの人が安倍医師のもとによく来ていたこと、安倍医師の意向ですべてが決まること、安倍医師は金にうるさい人物であることを語った。

➡帝京大学の内部に詳しい関係者の供述内容が、何故に高い信頼性を有するのか明らかではない以上、その供述内容が真実であると信ずるについて相当の理由があるということはできない。


コ 櫻井は、全国ヘモフィリア友の会の会報「全友第20号」を読んで、安倍医師が83年8月14日に友の会の全国大会で講演を行い、血友病のための財団法人ついて「私は今、お金を集めている。現在8000万円ほど集まっているが、皆友の会としてもお力添えいただければありがたい」と述べていたことを知った。

➡【櫻井は、安倍医師が寄付を集めているとの情報を得たのであるが、安倍医師が治験に絡めて寄付を集めていることまでは明らかになっていないから、これが真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない】


サ 櫻井は、東京HIV訴訟の原告の1人である高原洋太が前記のとおり、83年 月から85年8月にかけて、トラベノール、化血研と安倍医師を訪問して聞いたを、本件雑誌記事を執筆する以前に、高原から聞いた。

➡高原からの伝聞であり、その内容に高い信頼性があるとはいえないから、その情報が真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


 シ 櫻井は、本件雑誌記事を執筆する以前に、88年2月5日付けの毎日新聞朝刊の記事を読んだ。

この記事は見出しを「血友病治療の加熱血液製剤 学会権威「治験」遅らす」とするもので、リード文には「約千人と確認されている国内のエイズ…患者・ウイルス患者の9割以上は、エイズウイルスに汚染された血液で作った血液製剤で血友病の治療を受けていた人たちで、汚染消毒の加熱処理を施した血液製剤の開発が、わが国で大幅に遅れたため被害が拡大した。開発が遅れた一因は、製薬5社の臨床試験(治験)を一手に引き受けた血友病の権威、安部英・帝京大副学長(71)が、研究の遅れているメーカーのため、先行メーカーの治験期間を延ばすなどの操作をした「調整」であったことが4日、安部副学長本人や関係者の証言でわかった」との記載がある。

記事の本文には、安倍医師の語った言葉として「ミドリ(十字)は各社に比べはるかに遅れていた。どの製薬会社の薬も患者がみな安心して使える、ということでやらないと、あとで必ず、いざこざが起こる。だから、1社だけ遅れないよう調整した」との記載がある。

櫻井は、この記事のもととなった安倍医師に対するインタビューの録音テープを反訳した書面も、東京HIV訴訟の原告弁護団から入手し、本件雑誌記事を執筆する以前に読んだ。

➡毎日新聞の記事については、その内容に照らして、それに高い信頼性があると認めるに足りる客観的な裏付けがない限り、その記事を真実であると信ずるについて相当の理由があるとはいえない。また、毎日新聞記者の安倍医師に対するインタビューの反訳書面については、前記のとおりその内容に不明確な部分が多く、これによってミドリ十字の開発が遅れており、安倍医師がこれを調整するため治験を遅らせたと信ずるについて相当の理由があるとはいえない。


ス 櫻井は、トラベノール、ミドリ十字ら製剤メーカー5社に対して取材の申込みをしたが、裁判が進行中であるという理由で全社から断られた。

櫻井は、エイズ研究班の班員であった塩川雄一医師や、血液製剤小委員会の委員長であった風間睦美医師、委員であった長尾大医師(神奈川県立こども医療センター)に対しても取材を申し込んだが、いずれも断られた。エイズ研究班の班員であった大河内一雄医師に取材をしたことはあったが、安倍医師との意見の対立については「あまり言うと安部さんの批判になるので、話したくありません。敗軍の将、兵を語らずです」と述べ、話を聴取することはできなかった。

➡櫻井が安倍医師に対しインタビューを行った際、安倍医師自身が「私が、ちょっと、お、遅らしたというような事情、があるんですよ、治験を」と述べているが、これによって安倍医師がミドリ十字のために治験を遅らせたと評価することができないことは前記のとおりであり、そのように信ずるについて相当の理由があるとまではいえない。
 そのほか、櫻井は、ワシントンポスト紙が掲載した郡司課長のインタビューの記事等の新聞記事、広河隆一の著作による「日本のエイズ」、「ミドリ十字三〇年誌」、池田房雄の著作による「白い血液」、安倍医師の著作による「エイズとは何か」「『流れる血液』と取り組んで五〇年」、また、家庭療法委員会や血友病患者によって構成されている会の出版物、血友病患者・感染被害者やその家族からの聞き取り取材、これらの人達による集会における取材、血液製剤問題小委員会の委員長である風間睦美医師に対する電話インタビュー、エイズ研究班のメンバーである大河内一雄に対するインタビュー等によって、本件記載を含めた本件雑誌記事及び本件単行本を執筆した旨述べているが、これらの取材等のうち証拠として提出されているものを検討しても、いずれも安倍医師がミドリ十字のために治験を遅らせたこと及び治験の時期に製剤メーカー各社から寄付を募っていたことを真実であると信ずるについて相当の理由があるということはできず、その余の取材等についても、これらの点について立証がされたということはできない。

 

BOX4 「真実相当性」についての地裁と高裁の判断 

相当性の判断

■東京地裁判決

以上の認定事実によれば、櫻井は、本件雑誌記事の執筆までに、これらの調査や取材活動によって、厚生省は加熱製剤について第Ⅰ相試験を省略しようと考えていたのに、安倍医師はこれを実施する考えを表明し、加熱製剤の開発が先行していたトラベノールには第Ⅰ相試験の実施計画を示していたこと、加熱製剤の開発はミドリ十字が最も遅れていたのに、製造承認は他の製剤メーカーと同時に受けたこと、安倍医師が財団法人の設立のために、製剤メーカーから1社あたり1000万円という高額の寄付を受けていること、安倍医師が治験と金銭の関係の指摘を受けて、治験統括医を辞任したこと、安倍医師が毎日新聞の記者のインタビューにこたえて、加熱製剤の開発の早い会社が安倍医師のもとに治験を頼みに来たから「調整」したという発言や、1つの会社だけが遅れてしまうのでなく、製剤メーカー各社が同じような立場で競争してほしいと考えているという発言をしていることなどを知ったというのである。

その調査資料や取材相手にも、特に信頼性に問題があるものはなく、むしろ、櫻井は、可能な限り直接的な情報を得るよう努めていたものと認めることができる。 そうすると、櫻井が、このような調査や取材の結果に基づき、本件記載⑥で摘示した事実、すなわち、原告が製剤メーカー各社から寄付を受けていたので、加熱製剤の製造承認に向けて取り残されるメーカーが出ないように治験の開始を遅らせたという事実を真実と信じるについては、相当の理由があるというべきである。

本件記載のうち「一体いかほどの金に染まって医師の心を売り渡したのか」という記述は、この摘示事実を前提にして意見ないし論評を表明するものである。製剤メーカーから寄付を受けていたことが原因となって、安倍医師が加熱製剤の治験開始を遅らせたという事実があったとすれば、患者の生命や健康を守るべき医師が、それよりも企業の利益を優先させたものとして、大きな非難を受けたとしても決して不当なことではないから、このような事実を「金に染まって医師の心を売り渡す」と表現することも、意見ないし論評の域を逸脱するものとはいえない。

なお、前記の認定事実によれば、櫻井は、本件雑誌記事の執筆後、本件単行本の発行前に、安倍医師に対してインタビューをしている。しかし、そこでの安倍医師の発言内容は「私が治験を遅らせたという事情はある」、「あなたの書かれたものでは、遅らせたということだけが強調されている」と、治験を遅らせたことを前提にしたような発言をしつつも、「遅らせたと言っているけど間違いである」、「毎日新聞の記事にある治験を調整したというのは、ねつ造である」と言って「調整」の意味を説明するなど、全体として趣旨の明確でない応答に終始しているのであるから、本件単行本発行時に、従前のまま本件雑誌記事の記載を維持したからといって、相当性の判断が変わるものではない

 

■東京高裁判決

➡本件記載は、その全体を一般の読者の注意と読み方とを基準とすれば、加熱製剤の早期承認が血友病患者にとって利益であるのに、安倍医師がこれを犠牲にして、ミドリ十字のために治験の開始を遅らせた結果、加熱製剤の承認が85年7月にずれこんだこと、控訴人が治験の時期に、各社から寄付を募っていたこと、安倍医師が治験統括医の優位な立場を利用して寄付を強要したのなら大問題であること、安倍医師が寄付を受けていたので、製剤メーカーが取り残されないよう治験の開始を遅らせたこと等の事実を摘示するとともに、併せて自らの意見ないし論評を表明したものであるところ、前記取材等の内容を総合しても、櫻井がミドリ十字の治験開始が一時期遅れていたと信ずるについては相当の理由があると認められるものの、それ以上に安倍医師がミドリ十字のために治験の開始を遅らせたこと、治験の時期に各社から寄付を募っていたことについては、これを真実であると信ずるについて相当の理由があるということはできない。
 この点に関して、確かに、櫻井は、製剤メーカーやエイズ研究班の班員であった医師等に対して取材の申込みをしたにもかかわらず、これを拒否されて取材が実現しなかったことが認められるが、一般論として、十分な取材ができないために、事実関係の究明ができず、取材内容の真実性について幾ばくでも合理的な疑問が残るのであれば、それを前提とする記述にとどめるべきであるから、もとより取材の拒否が相当性判断を緩和させるなどの理由になるものではない。また、エイズ薬害問題は、多数の血友病患者が有効な薬剤であると信じて投与を受けた非加熱製剤にたまたま混入していたHIVに感染したために、持続性全身性のリンパ節腫脹等の臨床症状が出現し、更に細胞性免疫が障害されて悲惨な病状に陥るという人道的にも社会的にも極めて重大な問題であり、櫻井が、このエイズ薬害問題を取り上げて、諸外国に比べて我が国における血友病患者のHIVの悲劇が際だっており、適時に賢明な対処をしてさえいれば、この悲劇は防ぐことができたのに、現実は全く逆のコースを辿ってしまったとし、取材した多くの血友病患者らの心の叫びや人々の想いを伝えたいと考えて、本件雑誌記事及び本件単行本を公表したものであり、そのことはジャーナリストとして高い評価を受ける価値を有しており、また、この間題を広く一般の読者に問うものとして社会的にも重要な意義があるものと評価することができる。しかし、本件記載が真実であること及び真実であると信ずるについて相当の理由があるとは認められない以上、櫻井が名誉毀損に基づく不法行為責任を問われることはやむを得ないことといわざるを得ない。

 

BOX5 「真実相当性」についての最高裁の判断

相当性についての最高裁の判断

 

 

(2) 本件記載ア及びイについて

ア 前記事実関係によれば、安倍医師は、高原洋太(東京HIV訴訟原告)に対して、加熱製剤を1社だけが出したところで、製剤の奪い合いになっても困るので、これまで非加熱製剤を出していた全社の態勢ができるまで待たせた旨述べ、武田芳明(毎日新聞記者)のインタビューに対して、加熱製剤の開発は、トラベノールが先行し、ミドリ十字は遅れていたこと、どの製剤も安心して使えるように、治験の進行を「調整」したこと、どのメーカーも同じような立場で競争してもらいたいことなどを述べており、これらの安倍医師の発言は、加熱製剤の開発は、トラベノールが先行し、ミドリ十字は遅れていたが、安倍医師が、遅れていたミドリ十字に合わせて、加熱製剤の治験を遅らせたことを認める趣旨の発言であることは明らかである。前記事実関係によれば、櫻井は、本件雑誌記事執筆前に、これらの安倍医師の発言を知っており、また、安倍医師は、櫻井が本件雑誌記事執筆後本件単行本執筆前に行ったインタビューに対しても、ミドリ十字の加熱製剤の開発が遅れていたこと、安倍医師が治験を遅らせたことなどを述べていたことが明らかである。

前記事実関係によれば、櫻井は、その取材によって、米国トラベノールは、83年3月21日にアメリカ合衆国において加熱製剤の製造承認を受けたこと、ミドリ十字は、84年1月になって品質試験、一般薬理試験、急性毒性試験等の前臨床試験を終えたこと、トラベノール、カッター、ヘキスト、化血研及びミドリ十字の加熱製剤の治験開始の時期は、ミドリ十字が最も遅かったことを知ったことが明らかである。これらの事実は、加熱製剤の開発について、トラベノールが先行し、ミドリ十字は遅れていたことを認める旨の安倍医師の発言内容を裏付けるものということができる。

前記事実関係によれば、櫻井は、その取材によって、厚生省は83年11月の時点で第Ⅰ相試験は必要ないとしていたにもかかわらず、安倍医師は第Ⅰ相試験に固執しており、ミドリ十字以外の製剤メーカーからは、それは、加熱製剤の開発が遅れていたミドリ十字に配慮して長い治験期間をとろうとしていると考えられていたこと、トラベノール、カッター、ヘキスト、化血研及びミドリ十字の加熱製剤の製造承認がいずれも85年7月1日であったことを知ったことが明らかである。これらの事実は、安倍医師が、ミドリ十字に合わせて、加熱製剤の治験を遅らせたことを認める旨の安倍医師の発言内容を裏付けるものということができる。

以上によれば、本件記載執筆当時、櫻井が、本件記載アの摘示事実、すなわち、安倍医師が、83年11月以降、加熱製剤の開発が遅れていた日本の血液製剤市場の最大手であるミドリ十字に合わせて、加熱製剤の治験を遅らせ、その結果、我が国における加熱製剤の製造承認が85年7月にずれ込み、米国より2年4か月遅れたという事実を真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。

イ 本件記載イを、本件記載アと併せてみると、本件記載イは、製剤メーカーから安倍医師に対して財団の設立資金の寄付がされていたために、安倍医師が加熱製剤の治験を遅らせた旨の記載の一部であるから、本件記載イの「治験の時期」は、実際に治験が行われた時期に限られることなく、治験の実施が具体化する前後の時期を含むものと広く解することができる。

 前記事実関係によれば、櫻井は、その取材によって、安倍医師が83年8月14日に、財団について、「私は今、お金を集めている。現在8000万円ほど集まっているが、皆様友の会としてもお力添えいただければありがたい。」と述べていること、郡司課長は、安倍医師が治験に絡んで金銭を集めているとの噂が聞こえてきたので、山田兼雄医師に対して、そのことを被上告人に伝えるよう頼んだこと、山田医師は、安倍医師に対して、治験を依頼している製剤メーカーに財団への寄付を要求しているとの噂があることを話したところ、安倍医師は、「もう終わった。」と答え、寄付の要求をしていないとは述べなかったことを知ったことが明らかである。

以上によれば、本件記載執筆当時、櫻井が、本件記載イの摘示事実、すなわち、安倍医師が加熱製剤の治験の時期に財団の設立資金とするために製剤メーカー各社から寄付を募っていたという事実を真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。

ウ 上記各事実を前提とする意見ないし論評の表明である本件記載アの最後の1文(「こうして本来ならHIVに感染しなくてもすんでいたはずの多くの患者に感染させてしまった理由は、結局安部氏の〝欲〟にほかならないのではないか。」)については、意見ないし論評の域を逸脱するものということはできない。

エ したがって、本件記載ア及びイについて名誉毀損による不法行為は成立しないものというべきである。 

(3) 本件記載ウについて

上記のとおり、本件記載執筆当時、櫻井が、安倍医師が加熱製剤の治験の時期に財団の設立資金とするために製剤メーカー各社から寄付を募っていた事実を真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。また、前記事実関係によれば、安倍医師は、83年6月にエイズ研究班の班長となったこと、同年9月には同研究班に設置された血液製剤小委員会で加熱製剤について治験を実施することが決定されたこと、同年12月末までに安倍医師が治験統括医となったことが明らかである。

 そして、上記各事実を前提とする意見ないし論評の表明である、安倍医師が治験統括医という絶対的に優位な立場を利用して寄付を強要したのであれば大問題であるという部分については、意見ないし論評の域を逸脱するものではないということができる。

また、本件記載ウの最後の1文(「別の人物は、財団設立の資金だけでなく、学会での安部氏の地位と体裁を保つための資金も大きな額になると推測する。」)については、前記事実関係によれば、被上告人は、毎日新聞のインタビューにおいて、シンポジウムを複数回開催し、その資金について製剤メーカー各社から寄付を受けていることを認めており、このような資金が大きな額になることや安倍医師の学会での地位や体裁を維持することにつながることは容易に推認されるから、本件記載執筆当時、櫻井が、上記の最後の1文を真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。

 したがって、本件記載ウについて名誉毀損による不法行為は成立しないものというべきである。

(4) 本件記載エについて

上記のとおり、本件記載執筆当時、櫻井が、安倍医師が加熱製剤の治験の時期に製剤メーカー各社から寄付を受けていた事実を真実であると信じたこと、安倍医師は加熱製剤の承認に向けて取り残される製剤メーカーが出ないように治験を遅らせた事実を真実であると信じたことには、相当の理由があるということができる。 

また、上記のとおり、櫻井は、その取材によって、郡司課長は、安倍医師が治験に絡んで金銭を集めているとの噂が聞こえてきたので、山田兼雄医師に対して、そのことを安倍医師に伝えるよう頼んだこと、山田医師は、安倍医師に対して、治験を依頼している製剤メーカーに財団への寄付を要求しているとの噂があることを話したところ、安倍医師は、「もう終わった。」と答え、寄付の要求をしていないとは述べなかったことを知っていたものである。 

以上によれば、本件記載執筆当時、櫻井が、安倍医師が製剤メーカー各社から寄付を受けていたので、安倍医師が加熱製剤の承認に向けて取り残される製剤メーカーが出ないように治験を遅らせたという事実を真実であると信じたことには相当の理由があるということができる。そして、この摘示された事実を前提とする「一体いかほどの金に染まって医師の心を売り渡したのか。」という意見ないし論評の表明も、意見又は論評の域を逸脱するものではないということができる。

 したがって、本件記載エについて名誉毀損による不法行為は成立しないものというべきである。



各審判決書の出典
東京地裁
http://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/880/005880_hanrei.pdf

東京高裁
http://www.translan.com/jucc/precedent-2003-02-26e.html

最高裁
http://hanrei.japanlaw.net/a/579/062579